「かっこいい」との思いから始めた囲碁

政光順二さんインタビュー

政光順二さんインタビュー
☆・・・インタビュアー
●・・・政光さん

☆まずは、政光さんと囲碁の関係から伺いたいのですが、囲碁を始められたきっかけは何ですか?

●小学校の時に将棋をやっていましてね、それが中学生になった時に、何だか囲碁の方がかっこいいような気がして始めたのが始まりです。そもそも祖父がやっていたのですが、最初は本を読んだりして自分ひとりでやり始めて、それから祖父に習ったりしてました。

☆では中学生の時からずっと囲碁をされてきたわけですか。

●そうですね。高校、大学、社会人とやり続けてきました。私が通っていた高校には「囲碁部」はなかったので自分たちで作ったりしてね。毎年「全国高校囲碁選手権」というのがありまして、大分ではあまり囲碁をやっている高校生がいなかったので、個人戦も団体戦も一回戦が決勝戦とう具合なんですがね(笑)。なので、私は高校3年間大分県代表となって東京と開かれる全国大会に出場していました。

☆その全国大会での成績はどうでした。やはり強かったのです。

●それはもう一勝もせずでしたよ(笑)。やはり全国大会のレベルは高かったです。

☆確か、京都大学のご出身ですよね。大学のクラブ等には入っておられたのですか。京大の囲碁部というと、何だか強いイメージがありますが。

●はい、大学でも囲碁部に入りました。私が入った頃は全盛期で、全国大会で団体優勝をしたりととにかく強かったです。ただし私は選手ではなくずっと補欠でしたけど。
就職した会社にも囲碁部があったので入りました。京都新聞社主催の「京滋職域囲碁大会」という大会があって、私が入部して出場させてもらった年にうちの会社が初優勝しました。入社当時からはじめの何年間は囲碁部に入ってやってましたが、だいたいみなさんそうですが、仕事が忙しくなってきて続けられなくなっていきまして…。わたしも途中15年ほどのブランクがあります。

◇「igo-kids」というメーリングリストから始まった

☆ブランクのあと、また囲碁を始められるわけですよね。それは何かきっかけがあったのですか。

●一つは、趣味の範囲でですが、囲碁のコンピューターソフトを作ってみたことです。縦・横、白・黒なので、結構簡単に作ることができたんですね。
それともう一つは、自分に子どもができたことです。自分で子どもに教えたり、教室に通わせたりしていました。
この子どもの教室で他の親御さん方と知り合い交流するようになって、その中で「子どもの教育」という観点で話しているうちに、「子どもと囲碁」これはおもしろいんちゃうかな、と思ったのが今の仕事の原点です。

☆まずはどんな事をされたのですか。その当時は、まだお勤めをされていたと思うのですが。

●はい、その頃はまだ会社員でした。最初は、親御さんや教室の先生等で「igo-kids」というメーリングリストを作りました。それをやっているうちに「ヒカルの碁」という漫画の連載が少年ジャンプで始まり、2001年10月からはアニメが放送されるようになったんです。そんなアニメが放送されたら「やりたい!」という子が大量にできくるに違いない! と思いました。でもそれを受け入れてくれるような組織や団体はないなぁと思い、そこで「囲碁きっず」とうWebサイトを立ち上げたのです。
それは、メーリングリストの延長のような感じのもので、囲碁を始めるにあたっての疑問等を解決することを目的とした「掲示板」でした。例えば、「囲碁を始めたいけれど、どこで教えてもらえるか?」といったような書き込みに対して、知っている人が答えてあげるような。
それと、ちょうど同じ頃に、知り合いがインターネットで囲碁の対局ができるプログラムを開発しまして、それを「囲碁きっず」のサイト上で使わせてもらおうと考えて、10月にサイトを立ち上げて、11月には対局ができるようになりました。

政光順二さんインタビュー

☆それから会社を辞められて、本格的に「囲碁」のビジネスを始められるのですね。

●退社し、独立したのが2002年です。テレビ放送が始まって、案の定囲碁は盛り上がりました。うちのサイトへの訪問者もかなりの数になり、当時Googleで「囲碁」と検索するとうちのサイトがトップに出るほどでしたので。
それで、「会社勤めの片手間にやっている場合ではないぞ!」と思い独立したんです。サイト内で子どもの指導などボランティアをしてくれてたメンバー4人と、一緒に会社を興しました。

☆社名はその頃から「きっずファイブ」なんですか。事業の内容といえば、どんなことが中心だったのでしょう。

●社名は、会社設立時から「きっずファイブ」です。5人で作ったから5(ファイブ)。もちろん囲碁の碁(5)も掛けてますけども。
事業内容は、これは結局ダメになったのですが、大きな囲碁団体の公式インターネット対局サイトを作ろうという話があったり、韓国の囲碁対局サイトをやっているところと組んでみたり、あるプロの先生と組んで教材を作って販売したり…こんなことをやりながら今日に至るという感じです。

◇ボーリングやカラオケの並びでの「13路盤囲碁」

☆「きっずファイブ」さんといえば、「洛式」の碁盤のイメージがあるのですが、あれはいつ頃から手がけてらっしゃるのですか。目的はやはり囲碁の普及・啓発に関係しているのでしょうか。

●2010年の春くらいに話が持ち上がって、その年の夏から秋にかけていろいろ作りました。
日本の囲碁人口は、実質的には100~200万人くらいだと思います。私の目標としては、とりあえずこれを10倍にしたいと考えています。
囲碁の碁盤とうのは、正式なものは19路盤といって一局に2時間以上かかります。平安時代、江戸時代ならそれで良いのですが、今はもう時代が違います。我々の時間感覚というと、時間をもてあましてゆったりと何かをするというよりは、つまみ食い的にいろいろなものを楽しみたい。
囲碁は奥深いおもしろさはあるんですが、21世紀の私たちが遊ぶにはちょっと奥深すぎる…。もちろん、既に囲碁を楽しんでいる人は大きな碁盤で楽しんでもらえば良いのですが、これから囲碁をやってみようと思う相手に対して、大きな碁盤をもって「これが囲碁だよ」というと「子どもの頃からやってないと無理」と諦められてしまう。
囲碁は手軽に楽しめるものと思ってほしいです。実際に、私が就職してから囲碁をやる時間がなくなったというのも、一局打つのに時間がかかりすぎるからなんです。じっくり時間をかけて楽しむゴルフや釣りの並びとして本格的な「19路盤囲碁」がある一方で、もっと手軽に日頃遊んでいるという感覚で、ボーリングやカラオケの並びでの「13路盤囲碁」はあってもよいかなと思いました。

☆その「13路盤」は一局どれくらいかかるものなんですか。それで覚えても「19路盤」でも打てるものなんですか。

●「13路盤」でも、まじめにやれば40分~60分くらいはかかると思います。そういう意味では、「9路盤」というのもあるんですが、それだとゲームの雰囲気が変わってしまうのです。「13路盤」というのは「19路盤」が持っている複雑さの一端を垣間見せてくれるのです。そこが大きな魅力だと感じています。もちろん、13,9路盤で囲碁を覚えても、「19路盤」でも打つことはできます。

◇5月には囲碁の拠点が誕生!

☆碁盤のこともそうなんですが、新しいことにいろいろ挑戦される政光さんですが、春から、また新しい試みをされるとお聞きしていますが、その辺をちょっとお聞かせいただきたいのですが。

●会社を立ち上げてから10年になりますが、その中で「拠点がない」というのはネックだなと感じることが只ありまして。碁盤にしろ置いておくところがないし、「町家で囲碁」という活動をしていますが、単発的なもので積み重なっていかない……。
そこで、東京や名古屋、大阪など他でやっている方々の動きをみていると、やはり場所・拠点があり、そこで盛り上がっているんですよね。「場所」は絶対にほしいなと思い、「囲碁bar」という場所をつくることにしました。

☆「囲碁bar」ですかあぁ。確かにこれまでにないものですね。そこはどんな場所になる予定なんですか。

●普通に働いている人が「囲碁をやってみようかなと」思って行くところと言えば「碁会所」なんですが、そこはだいたい午後7時には閉まります。仕事終わって、残業が終わって午後9時から囲碁ができる場所というのは無いわけなんです。なので、夜お酒を飲みながら囲碁が打てる場所が欲しいなあと思いまして。
夜の7時半から11時半までやります。水曜日と土曜・日曜だけなのですが、様子をみて平日を増やすこともあるかもしれません。

政光順二さんインタビュー

☆情報発信をしていくようなしかけを考えておられるとお聞きしたのですが。

●はい。Ustream を使っての囲碁の超・初級レベルの番組作りなど考えています。

☆ここまでのめり込める囲碁の魅力というのは何なのか、ぜひ教えていただきたいのですが。

●私自身、実は囲碁のプレーそのものを楽しむことは多くないのです。もちろん、打てば真剣になるし負けると悔しくて勉強したいと思ったりはするのですが…。社会人になってからは特に、日頃囲碁の勉強を熱心にしているわけでもなくて(笑)。
ではいったい何がおもしろくてやっているのかいえば、「いろんな人が囲碁にはまっていく様子」というか、一生懸命勉強したり、悩みながらも強くなっていったり、様々な人が囲碁にはまっていくのがある意味おもしろいと感じています。おもしろいし、そういう人たちが充実して生きているのが見えるんですね。これが一番の魅力でしょうか。

☆囲碁というのは人なんですね。

●そうですね。強い人と対局するのはそんなに熱心ではない私ですが(笑)、囲碁の入門者や初心者に教えるのは大好きですね。囲碁を始めたばかりの方同士が、ライバル意識をもって「もう一局!」などとやりはじめるのを見るのはとても嬉しいです。そういう方も含めて、楽しく対局のできる環境、場づくりということをネット、リアル含めていろいろ考えてきました。

☆そこから9や13路盤も広がっていったら良いですね。

●そうなんです。今現在は9、13路盤での大会もほとんどありませんし、NHKで放映される対局番組もすべて19路盤のもの。本屋にある囲碁本も19路盤のものばかりです。だからアマチュアが始めるところでも「19路盤」が本物という意識が凝り固まっているところがあります。そこで、トップの人たちの9、13路盤の良い作品を表に出すことで意識を変えて、最終的にはNHKで13路盤の対局が放送されるような世界にしようと、私はそこまで思っているわけです。「NHKのテレビを見ていると眠くなる」というのは、囲碁ファンの間でもよく言われることなんですが、13路なら最初から最後まで集中してスリリングに楽しめると思いますし。

☆では最後に、最終的な目標というか夢はなんですか。

●囲碁で世界中を飛び回ることです。毎年、世界アマチュア囲碁選手権というのが開かれていて、出場国は約70カ国。その国々に、囲碁がもっと広まる仕組みを作っていけたらな思っています。

☆ありがとうございました。